児太郎氏は人間国宝・七代目中村芝翫を祖父に、九代目中村福助を父に持つ女形の名門・成駒屋の御曹司である。2025年6月には『週刊新潮』により妻への暴力行為が報じられ、離婚協議が始まっていた。モデルプレスも、歌舞伎界で不祥事が相次ぐ現状に警鐘を鳴らしている。
廃業は不可避か、梨園の厳しい見方
歌舞伎関係者は同誌に対し、復帰の芽はないと断じる。「前回のDV報道に続き、今回の暴力事件は逮捕までされましたから、もう歌舞伎役者として復帰の芽はない。廃業でしょうね」と語った。さらに児太郎氏は「御曹司なのをいいことに、ほかの家のお弟子さんにまで難癖をつけることで有名でした」とし、梨園内での評判も芳しくなかったことを明かす。結婚に際しても披露宴を行わず籍だけを入れていたといい、「事情があるに決まっています」と指摘する。
宙に浮く大名跡「歌右衛門」の由来
そもそも父・九代目福助が七代目歌右衛門を襲名し、児太郎氏が十代目福助を継ぐ予定だったが、2013年に福助が脳内出血で倒れたため取りやめとなり、以後、大名跡は宙に浮いたままというのが実情だ。
「中村歌右衛門という名前は、明治に五代目が女形を代表する名前にまで育て上げ、それを六代目がより大きく開花させました。六代目は他の追随を許さない大成駒と呼ばれるまで名を馳せ、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場で『娘道成寺』を披露しました」と同関係者は解説する。
六代目には子がなく、二人の芸養子を迎えた。それが高砂屋の中村梅玉と、加賀屋の中村魁春兄弟である。このため大名跡は「一代ごとに高砂屋と成駒屋を行ったり来たりするのが取り決め」という。七代目は成駒屋の番であった。
なぜ中村七之助が候補に浮上するのか
成駒屋としては大名跡を高砂屋に譲るのは惜しいが、成駒屋内で女方の後継者は見当たらない。九代目福助の弟・八代目芝翫の息子である橋之助、福之助、歌之助の三兄弟は全員歌舞伎役者であるものの、女方に転向した者は一人もいないという。
そこで視野に入ったのが中村屋の中村七之助である。七之助の母は八代目芝翫の姉で、児太郎氏のいとこに当たる。祖父は成駒屋の七代目芝翫であり、成駒屋と中村屋双方の血を引く存在だ。過去には血筋にこだわらず大名跡が継承された例もあるという。
関係者は七之助の人物像をこう語る。「七之助は、まったく欲のない方。『中村屋には勘太郎、長三郎という跡継ぎがいるから僕は一生結婚しなくてもいい』と言っていたほど」
その七之助氏が2025年に京都の芸者と結婚し、2026年8月には娘が誕生。人的に大きな転機を迎えた。関係者は「芸を見ても、人の親になって演技に深みと説得力が出た」と評価する。8月の歌舞伎座『鬼神のお松』では、花道の上で毎日大粒の涙を流し観客の度肝を抜いたという。今月の平成中村座『助六』の揚巻については「場を鎮まらせる美しさ。酔いっぷりが妖しくて、客席を呑み込んでいました。女方の最高峰の役がこの揚巻です」と絶賛する。
「奥さんが背中を押せば、歌右衛門を引き受けるかもしれません」(同前)
女方の技芸を未来へ繋ぐ重み
現在、歌舞伎役者は全国で300人あまりしかいない。そのうち女方は25人に満たないという。ZAKZAKの報道も、二度の不祥事によりW襲名の望みはほぼ絶たれたと伝えている。明治以来受け継がれてきた女形の至芸が、個人の不行跡によって途絶えることのないよう、梨園には伝統を守る重い責任が課されているといえよう。
FAQ
中村児太郎氏はなぜ逮捕されたのか?
2026年10月21日、知人女性に暴行を加えたとして傷害容疑で逮捕された。容疑を認め、釈放後は任意の捜査が続いている。
中村七之助氏が歌右衛門継承の候補となった理由は?
成駒屋内に女方を継げる役者がいない中、母方の血筋で成駒屋と中村屋双方の家系に連なり、女方として高い評価を得ているためである。
七代目歌右衛門襲名はなぜ宙に浮いているのか?
2013年に九代目福助が脳内出血で倒れたため、福助による七代目襲名と児太郎氏による十代目福助襲名のW襲名計画が取りやめとなったためである。
