俳優の岸井ゆきのが11月1日、東京都内で開かれた映画『すべて真夜中の恋人たち』(11月13日公開)の東京国際映画祭舞台あいさつに登壇し、川上未映子氏の原作小説の熱心な読者であるがゆえの葛藤を明かした。
同作は東京国際映画祭のガラ・セレクション部門に出品された作品で、川上氏による同名の恋愛小説の映画化である。岸井は、人との関わりを拒み孤独に生きてきたフリーの校閲者・入江冬子を演じている。
原作を何度も読み返したという深い愛着
岸井は川上氏の作品への思いを率直に語った。原作が世に出たときから繰り返し読み続けてきたという。
「(原作が)生まれたときに読んで。1回で済まなくて、何回も読んでいる」
それほど愛する作品への出演であるため、岸井はプレッシャーを感じ、「なぞってはいけない」という気持ちを抱いていたと明かした。心の内には、原作への敬意と、演じる者としての自制心が同居していた。
「自分の中で思い出や『自分の冬子』がすごく詰まっているっていうことに、台本を読んで気づいて。そこから脱却しないと、映画『すべて真夜中の恋人たち』が自分の中で本当に整理がつかなくなってしまって」
こうした大ファンならではの悩みを打ち明けた岸井は、岨手由貴子監督と丁寧にコミュニケーションを重ねながら、冬子という人物を銀幕の上に丁寧に描き上げたという。俳優として原作の記憶と向き合い、新たな創造へ踏み出す姿勢がうかがえた。
物語の内容と登場人物
本作では、孤独のなかで生きてきた校閲者の入江冬子(岸井ゆきの)が、年上の物理教師・三束(浅野忠信)との出会いを通じて、日常が少しずつ変化していくさまが描かれる。冬子のみならず、三束や石川聖(森田望智)をはじめとする登場人物たち、誰もが心のどこかに抱える孤独が、静かで繊細な筆致で描き出されている。
現代的でありながら普遍的な主題を静かに差し出す本作は、小さな心のさざ波を、息を止めて見つめるようなラブストーリーとなっている。クリエイターの挑戦を支え、日本映画の伝統と未来を繋ぐ国内の映画祭の舞台で披露された意義は小さくない。
この報道はエキサイトニュースが伝えたもので、Yahoo!ニュースにも同じ舞台あいさつの模様が配信され、広く注目を集めている。またNTTドコモのポータルニュースも同日の報道として配信を行っている。
原作者・川上未映子氏の感想「美しい翻訳の1つ」
舞台あいさつには原作者の川上氏も登壇し、完成した作品を鑑賞した感想を述べた。その言葉には、文学と映像という異なる表現が出会ったときの喜びがあふれていた。
「映像化というのは原作にとって美しい翻訳の1つだと思いました。書くだけでも読むだけでも分からない物語というのが原作にあって、そのことに気付いていく体験でした」
さらに川上氏は、初めて長編小説の映像化の機会を得たことへの感動をこう語った。
「初めて長編小説を映像化していただく機会であって、そのことにも感動しました。皆さんの経験や時間を持ち寄って全力で、今回の映画だったら『光』というものに向かっていかれて、その手触りが本当に残っていて、全くの感動にあずかったなと感激しています」
制作者たちが「光」に向かって全力を尽くした姿勢が、原作者の心に確かに届いたことを示す言葉である。
岸井ゆきのの切実な訴え
イベントの終盤には、岸井が来場者に向けて熱のこもった訴えをかけた。公開初日から続く興行の行方を案じる、現場ならではの切実さがにじむ発言だった。
「映画って最初の3日が大事なんですね。3日でいっぱい見てもらえると良いことが起きるんです。この映画好きだなと思ったらいろんな人にお伝えしてくださると、私たち本当に喜びます」
この日はほかに、浅野忠信、森田望智、岨手由貴子監督も登壇し、作品の完成を祝った。
読者の皆さまへ:よくあるご質問
映画『すべて真夜中の恋人たち』の公開日はいつですか?
2026年11月13日に全国で公開される予定です。
原作はどのような小説ですか?
川上未映子氏による同名の恋愛小説で、孤独に生きてきた校閲者・入江冬子と年上の物理教師・三束との出会いを描いた作品です。
岸井ゆきのは何という役を演じていますか?
主人公の入江冬子を演じています。人との関わりを拒み、孤独のなかで生きてきたフリーの校閲者という役どころです。
東京国際映画祭ではどの部門に出品されましたか?
ガラ・セレクション部門に出品され、11月1日に舞台あいさつが行われました。
