政府の災害対策を省庁横断で統括する防災庁が2026年11月2日に発足し、細野防災相は同日、「事前防災徹底のための緊急要請」を発出して、国民に水・食料を最低3日分、できれば1週月分の備蓄を呼びかけた。国難級の災害に備える国家の姿勢が、家庭の備えと産業の成長という二つの柱で明確に示された形だ。
ダイヤモンド・オンラインの報道によれば、政府は「防災・国土強靱化」を成長戦略の重点分野に位置付け、防災技術に対して今後5年間で2.6兆円の官民投資を想定している。防災はもはや単なるコストではなく、日本の産業競争力を支える分野となりつつある(ダイヤモンド・オンラインの解説)。
2026年7月の熊本県での最大震度7の地震、8月の千葉豪雨、9月には台風25号による千葉県を中心とした甚大な被害。日本列島が巨大自然災害と隣り合わせにあることは、もはや論を俟たない。南海トラフ巨大地震や首都直下地震への備えを強化するための組織が防災庁である。
「徹底した事前防災」とは何か
防災庁が最重要方針に掲げるのは、発災後の救助・復旧だけではなく、被害を最小限に抑える「徹底した事前防災」だ。避難所のトイレ、キッチン、ベッド、入浴設備などの整備を進め、専門人材を育てる「防災大学校(仮称)」の設置も検討されていると、日本経済新聞は報じている(日本経済新聞の報道)。人工知能(AI)を使った情報発信や救助ロボット、防災ドローンの活用も想定される。
家庭への要請も具体的だ。防災庁の緊急要請では、大規模災害時に物流やインフラが停止し、救援物資の到着まで3日から1週間以上かかる可能性が指摘され、その期間を自力で生き延びる備えが求められている。TBS NEWS DIGの報じるところによれば、4人家族の場合、500ミリリットルのペットボトル168本、アルファ米84袋など、125キロに及ぶ備蓄が必要とされる(TBS NEWS DIGの記事)。
我が国の防災意識は、家族を守るという伝統的な価値観と直結している。水と食料の備蓄は、まさに家庭の主が果たすべき務めであり、国がその徹底を求めるのは当然の帰結と言えよう。
2.6兆円の官民投資と防災産業の育成
政府の日本成長戦略では、防災技術の開発・製品化・実装に5年間で2.6兆円の官民投資を想定し、防災庁が司令塔として関係省庁の制度や事業を生かしながら投資を促す。事業構想オンラインが伝えるとおり、防災庁は「攻めの防災庁」として戦略的な危機管理投資を進める方針を公表している(事業構想オンラインの報道)。
2027年度の防災庁関係予算概算要求は約652億円で、うち約225億円を技術開発・実装や防災産業の育成に充てる計画だ。重点分野は「災害用トイレ」「防災食」「衛星による被害把握」「建機の自動・遠隔施工」「林野火災の消火技術」など。
海外展開も成長の柱である。細野防災相は10月30日の記者会見で、2027年半ばをめどに「国際防災協力戦略」を策定すると明らかにした。防災製品や復旧技術の輸出を支援し、日本企業の防災分野の海外売上高を2024年の約1兆円から2030年に約2兆円へ引き上げる目標を掲げる。2027年10月には仙台市でアジア太平洋防災閣僚級会議が開催される予定で、日本の防災技術を世界に発信する好機となる。
注目される「防災・備蓄」関連銘柄
ダイヤモンド・オンラインが今回選定したのは、緊急備蓄・避難所環境の改善、自動・遠隔施工、災害復旧、消防、衛星・ドローンによる災害把握、防災DX、災害リスク予測に関連する企業群である。政策支援が具体的な受注や継続的な売上増に結びつくかが評価の焦点となる。
石井食品(2894)
加熱や水がなくても食べられる長期保存型の非常食を展開。約4年間保存できるおかゆ・リゾットやアレルギー配慮商品も手掛ける。2022年に千葉県と災害時の物資供給協定を締結しており、備蓄要請による買い増しや定期的な入れ替え需要への寄与が注目される。
ナカバヤシ(7987)
工具やテープ不要で組み立てられる段ボール製簡易ベッドや、避難所の衛生環境確保に重要な段ボールトイレを展開する。防災用品は同社の幅広い事業の一角にとどまるため、実際の受注増を見極める必要がある。
モリタホールディングス(6455)
消防車や消火器、消防設備の大手で、はしご車などの開発・製造に強みを持つ。消防車両とドローンを組み合わせた消火活動の研究開発で消防庁の支援制度に2年連続採択。6月にはスペインのITURRIと協業し、欧州・中南米・北アフリカ向けの新型はしご車を発表した。国際防災協力戦略との親和性が高い。
日立建機(6305)
遠隔操作ソリューション「RBT」シリーズで人が立ち入りにくい場所での施工を支援。2026年9月には経済産業省とNEDOの支援を受け、フィジカルAIの研究開発を10月から開始すると発表し、災害現場でのがれき除去作業の自律化を目指す。
Synspective(290A)/QPSホールディングス(464A)
两家とも小型SAR(合成開口レーダー)衛星による観測を手掛け、夜間や悪天候でも地表を観測できる。Synspectiveは国連開発計画の事業に採択されジャマイカでの海面上昇対策を支援。QPSは国土技術政策総合研究所と広域火災の被害検出に関する研究を開始した。
このほか、緊急備蓄関連では亀田製菓、サトウ食品、萩原工業、デンヨー、遠隔施工・消防ではコマツ、帝国繊維、能美防災、衛星・ドローンではACSL、Terra Drone、NEC、防災DXでは応用地質、アジア航測、ウェザーニューズ、オプテックスグループなどが関連銘柄として挙げられる。
防災は国民の務め、投資は国の戦略
災害大国たる我国において、事前防災の徹底は国民各人が担うべき務めである。同時に、防災技術を産業として育て、世界に発信する姿勢は、国の自立と繁栄に直結する国家戦略だ。防災庁の発足は、その両面を一つの組織の下に束ねた歴史的な一歩として評価されるべきだろう。
よくある質問
防災庁はいつ発足しましたか?
2026年11月2日に発足しました。発足初日に細野防災相が「事前防災徹底のための緊急要請」を発出しています。
家庭ではどれだけの備蓄が必要ですか?
最低3日分、できれば1週間分の水・食料の備蓄が求められています。4人家族の場合、ペットボトル水168本、アルファ米84袋など約125キロに及ぶとされます。
政府の防災投資はどれくらいの規模ですか?
防災技術に対し、今後5年間で2.6兆円の官民投資を想定しています。2027年度の防災庁関係予算概算要求は約652億円です。
